医学部在学中から開業医になろうと志した私は、浜松医科大学卒業後すぐに、板橋区の小豆沢病院研修医になりました。当時、卒後は大病院で単科ストレート研修し、その科の専門医となってゆくのが主流でした。小豆沢病院は「中小病院」ですが、地域住民の信頼厚く、あらゆる病気が学べ、開業医を目指すに相応しい病院でした。研修開始から2年間、内科だけでなく、外科、産婦人科、整形外科、そして小児科を回り、大勢の入院患者さんの主治医を務めました。
医師4年目、練馬第一診療所へ青年所長として赴任しました。診察室での診療は勿論、胃カメラや腹部エコー検査も自ら行いました。往診では、疾患にとどまらぬ生活苦を目の当たりにすることもありました。患者会や後援団体との白衣なしの交流は、懐かしい思い出です。「地域の主治医」としての責任と醍醐味を味わった2年間でした。
医師6年目で病院に戻り、いつしか糖尿病と血液透析を担当する病院の中核医師になりました。やがて膨大な診療・管理業務に追われる日々となりました。意を決し、長らく勤めた病院を 2014年1月に退職、企業の産業医に転身し、開業準備を開始しました。病院には外来非常勤医師として残りました。
板橋区に住み28年、今では地域の人たちと、すっかり慣れ親しんでいます。知人からの健康相談も日常的になり、 この地で開業したい気持ちは高まるばかりでした。クリニックなら、待ち時間だって病院外来より短くなるでしょう。 しかし肝心の、イメージ通りの開業物件は、なかなか見当たりませんでした。
2015年夏、歩いて自宅から病院に向かう通勤路に、空き地が出来ました。クリニックを建てるのに、うってつけの場所です。アパートでも建つのか?と思いつつウェブ検索すると、なんと地元不動産業者の販売物件ではありませんか!私の心が、大きく揺さぶられた瞬間でした。ここから長年の夢だった開業に向けて、全てが動き始めてゆきました。
そして2016年9月、板橋区志村1-12-6になかむらクリニックを開設致しました。いつでも皆様の思いに寄り添い、誰でもかかりやすいクリニックを目指します。宜しくお願いします。
院長 中村 直也
1988年 浜松医科大学医学部卒業
1988年 小豆沢病院内科研修医
1991年 練馬第一診療所所長
2005年 小豆沢病院副院長
2014年 東芝ソリューション株式会社・産業医
2016年9月 なかむらクリニック開業
◆ 難病指定医
◆ 日本医師会認定産業医
飲食店の閉店時間が9時に延びたのも束の間、再び8時に逆行。微妙な「マンボウ」に翻弄される飲食店が気の毒でなりません。GWを間近に控えたこの時期に彼らの衝撃度は微妙どころか、マンボウの図体の様に計り知れぬ気がします。
第4波と呼ばれる大阪の新型コロナ感染症爆発が注視されています。この第4波の主役は変異ウイルスで、その感染力や重症化率は従来型の2倍前後と推定されています。東京の感染者数増加も変異ウイルスのせいと見做され、これではオリンピック開催など到底無理と思われたその矢先、菅首相は躊躇せず渡米。そして4/18河野大臣がフジテレビ「ザ・プライム」に登場しました。見逃した方はYOUTUBE「日曜報道THE PRIME2021年4月18日FULL SHOW HD」でご覧下さい。この間の動向が妙にドラマチックに思えるのは、いつもの私の穿ち過ぎかも知れません。
「ザ・プライム」によれば、菅首相は渡米中にファイザー社ブーラCEOと電話会談。首相が日本の全ての対象者に今年9月までの確実なコロナワクチン供給を要請、ファイザー社CEOは日本へのワクチンの確実かつ迅速な供給に向けた協議を進めると返答。これで9月末までに16歳以上の国民全てにワクチンが行渡る見込みが立ちました。1日当たり接種回数5~10万回で推移する亀の歩みのように遅々としたコロナワクチン接種実績でしたが、GW明けから週1000万回単位に増加と読み取れる河野大臣のご発言がありました。厚労省HP「新型コロナワクチンの接種実績」でワクチン行政の真偽を確かめて行くことができます。
アストラゼネカ社ワクチンに副作用問題が発覚しデンマークでは使用中止、英国では30歳未満推奨せずとなった今、ファイザー社ワクチンに対する需要が世界的に高まっています。この中で日本がどれだけの配分を獲得できるか未知数ですが、菅首相の渡米で日本のコロナワクチン行政が前進を見せたことに疑いはありません。菅政権の起死回生の延命策?が、まだワクチン接種の進まぬ医療従事者や国民の不安を軽減してくれることを願うばかりです。
当院は板橋区コロナワクチン接種委託医療機関として既に登録済みです。正直に言うとワクチン供給不足の中、半信半疑で進めていた接種準備の「本気度」は、今回の報道で急上昇しました。間もなく私自身が予防接種を受ける予定です。後期高齢者の皆様には5月6日から順次ワクチン接種券が送付され、5月10日から接種予約開始予定です。ワクチン接種実施の詳細は板橋区ホームページをご覧ください。
令和3年4月19日 院長 中村直也
緊急事態宣言解除後、飲食店の閉店時間が9時に延びました。それで何が変わるのか少し疑問がありましたが、ある店の客足は早速回復傾向だそうです。私も早めに残業を完遂すれば、外食が十分可能になったことに気が付きました。
それはさておき、PCR陽性者数が増加傾向なのが気になる今日この頃。頼みの綱は新型コロナワクチンの筈でしたが、予定通りに接種は進んでいません。いつまで待てば打ってもらえるのか、怪しい雰囲気を感じている方も多いでしょう。読売新聞社世論調査で、新型コロナワクチン接種が他先進国と比べ遅れていることに不満を感じる人は「大いに」32%、「多少は」38%、計70%に上るそうです。
さて現在、どれぐらいの人数が新型コロナワクチン接種を受けたのでしょうか。首相官邸ホームページ「新型コロナワクチンについて」に、ワクチン総接種回数が記されています【(令和3年4月2日17時時点)1,096,698回】。 さらに厚労省ホームページ「新型コロナワクチンの接種実績」を閲覧すると、1日当たりのワクチン接種回数は5万回前後であることがわかります。ワクチンは2回打って完了します。すると、全国で日々2万5千人しかワクチン完了できないスローペース。これでは、一体いつになれば国民レベルでワクチンが行き渡るのでしょうか。
板橋区ホームページには、新型コロナワクチン接種に関する具体的なスケジュールが示され、5月中旬以降に高齢者の接種開始予定が掲げられています。これをどこまで本気にして良いのか、複雑な思いがします。「高齢者」全員がワクチン接種完了するのはいつの日なのでしょう。その次に優先接種となる「基礎疾患を有する者」に行き渡るまで何年かかるのでしょう。オリンピック開催を間近に控えながらのワクチン接種のこの現況は、是非押さえておくべきでしょう。さらにワクチン接種詐欺の横行に要注意です。老若男女、誰もが詐欺被害に会う可能性あり。十分に気を付けたいものですね。
令和3年4月5日 院長 中村直也
まだ少し冷たい風に揺れる木々の枝には若葉の芽がびっしり並び、いつの間にか春を待ち受けています。1/8第二次緊急事態宣言後からPCR陽性者数は減少を始め、3/7に宣言全面解除の見通しとなりました。そんな昨今の話題の中心がコロナワクチンです。当クリニックにおける日常診療でも、皆様の関心の高さを実感しています。そこで「新型コロナ感染症の現在(いま)」と題したコラムを新たに立ち上げ、皮切りにコロナワクチンを概説することに致しました。宜しければ、再度のお付き合いをお願い申し上げます。
すでに日本政府は、コロナワクチンを手掛ける製薬会社のうちファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社の3社から合計で3億1,400万回分のワクチン供給を受ける契約を締結しています。ワクチン接種は1人当たり2回が望ましいため1億5,700万人分となります。このうちファイザー社ワクチンが魁となり、今月17日から国内の医療従事者に対する接種が始まりました。日本人に対する安全性評価の後、4月から高齢者を対象にしたワクチン接種が想定されています。市町村が郵送する「接種券」を持ってインフルエンザワクチン同様に注射出来ればわかりやすいのですが、その方法や規模などは明らかになっていません。21日河野行改担当相は、ワクチン供給と接種の日程について「今週中に、ある程度の決断をしなければいけない」と発言しています。
さて、このコロナワクチンはどの位期待できるのでしょうか。ファイザー社のワクチン成績をご紹介しましょう。4万人以上にワクチンまたはプラセボ(偽薬)を2回注射。このうち170人が初回注射から28日以内に新型コロナ感染症を発症。内訳は、プラセボ注射群から162人、ワクチン注射群から8人が発症。従って有効率は95%でした【(1-8/162)×100=95】。同様な比較から、モデルナ社ワクチンは有効率94.5%を示しました。ちなみにインフルエンザワクチン有効率は2回接種で50%前後ですから、コロナワクチンの効き目は確かなようですね。いずれにせよ、皆さんが注射出来るようになるまで、まだ間があります。じっくり、ゆっくり情報収集し考えておくと良いでしょう。当院も、事前準備は怠らないようにして行きたいと思っています。
すでに花粉症の季節が到来しております。窓開け換気はほどほどにして、花粉が屋内に入り込まないよう気を付けてくださいね。
令和3年2月23日 院長 中村直也
<コロナ感染症報道を冷静に読み取る---最終稿>
行楽客で各地が久々に賑わった9月連休から早や3週間が過ぎました。この間の都内感染者数や重症者数は3月連休後とは違って頭打ちのまま。東京もGo toトラベル対象となり今後ますます行楽客が増え、新型コロナ感染症に対する警戒心が和らいでゆくかも知れません。私も実は先週の日曜日、秋の味覚を求め池袋のデパ地下を訪ねてきました。駅構内を行きかう人の波は以前のそれに立ち戻り、デパート食品街は買い物客で賑わっていました。お値打ち価格で岩手松茸と大間マグロを手に入れ、帰路につきました。しばしコロナ・ワールドを忘れて、人の心と経済の回復の兆しを感じてまいりました。
コロナ禍で延期になっていた自治体検診が8/17から開始され2か月、そして今月からインフルエンザ予防注射が始まりました。検診や予防注射で時に院内が賑わうこの頃です。病院やクリニックが本来の役割を取り戻してゆくことを祈るばかりです。
ところで、3月からの喧騒と自粛で私たちは一体何を学んだのでしょう。マスクをすること、手を消毒すること、毎日熱を測ること、大声で話さないこと、三密を避けること等々。果たしてこれらは、どの程度有効だったのでしょうか。そしていつまで続ければよいのか、誰も明確な答えを知りません。少なくともインフルエンザの季節が終わるまで警戒心は解けないでしょう。インフルエンザとの同時感染で重症化するとの報告もあるからです。
さらに新型コロナ感染症が終息しても、それで全て終わる訳ではありません。振り返ればSARSに端を発した重症コロナウイルス感染症の再興周期は次第に短くなっています。新型インフルエンザの襲来もありえます。じっと風雪を耐え忍ぶべき時は、いずれ再来すると覚悟しておくべきでしょう。私は自問自答しています。今回が貴重な経験として胸に刻まれたのか。異変にいち早く気付くための心のアンテナは立っているのか。いつも心に備えがあれば、被害はより少なくなることだろう。安心はしても油断してはならないのだ、と。
この連続コラム「コロナ報道を冷静に読み取る」の稿を起こしたのが4月。不安に駆られる皆様を目の当たりにして、少しでも前向きになって頂きたく書き始めました。不安・恐怖で家に閉じこもり来院できなくなった方の全てが、今は定期通院に復しておられます。過熱したコロナ報道は既に影を潜め、当コラムの役割は終焉を迎えました。来年の春にはマスクを外し皆様と笑顔で話せることを夢見つつ、筆を置くことにします。長らくのご愛読、誠にありがとうございました。私自身が勉強する機会にもなったことを心から感謝しております。
令和2年10月12日 院長 中村直也
<安倍首相辞任劇>
予想に違わず8/28安倍首相が辞任表明しました。歴代一位の長期政権となるも本目を果たせぬまま、コロナ禍と諸々の利権の渦の中に飲み込まれてしまった様にも見えます。予想外の内閣支持率急上昇は、病魔と闘う安倍首相へのせめてもの労いなのでしょうか。
本日の都内における新型コロナ感染症新規陽性者数は2週間ぶりの100人割れでした。東京都モニタリング7項目のうち検査陽性率は9/4現在3.4%で8/6ピーク値7.0%から半減、重症患者数は右肩下がりになっています(東京都新型コロナウイルス感染症対策サイトより)。都内死者数は都防災HPで集計可能ですが手間がかかるので、NHK特設サイト新型コロナウイルスの全国集計を参考にします。
5/31までを前期、6/1~9/6を後期として全国の感染者数/死者数を見ると前期16902人/898人、後期55137/471。致死率を単純計算すると5/31時点で5.3%、9/6時点で1.9%です。後期は前期の3倍以上の感染者数なのはPCR検査数拡大に符合します。一方、後期の死者数は前期の約半分。新型コロナ感染症の致死率を同程度に見積もると「検査陽性だが感染者ではない」場合が相当数含まれるか、高齢者施設の感染対策や病院の重傷者治療が奏功しハイリスク者が保護された可能性が考えられます。
先ごろ国立感染症研究所から報告された第1波(1/16-5/31)と第2波(6/1-8/19)の感染者に占める70歳以上の割合はそれぞれ20.3%、8.8%でした。「検査陽性だが真の感染者とは言えない若年者」が増加し、同時に高齢者への感染防御対策が奏功したようにも見えます。全年齢で見ると集団免疫がさらに進んだ結果かもしれません。
8/24厚生労働省に助言する専門家の会合で「実効再生産数」が各地で流行収束に向かう目安となる「1」を下回っていることが報告されました。9/2同会合では国立感染症研究所の「調整致命率」のデータが新たに報告されました。今年5月の「調整致命率」は全体で7.2%、70歳以上で25.5%に対し8月のそれは全体で0.9%、70歳以上で8.1%と大幅に改善していたそうです。第2波終息を示唆する結果ではないでしょうか。
前回紹介した集団免疫説の上久保氏は、適度にウイルス暴露され続けないとせっかく獲得された免疫が維持できないと忠告します。そのためマスクや3密回避は必要ない、と刺激的ながらも、さらりと解答なさっています。先進国では死者数が桁違いに低いジャパンミラクルの中で、なお低評価に甘んじた安倍政権は、そのコロナ対策はもとより、もっと人の痛みがわかる姿勢を求められたのではないでしょうか。医療崩壊には経営的問題も含まれます。感染症法の見直しは急務と思われます。次期首相は、これらの点で強いリーダーシップを発揮してほしいものです。腰引け野党?の皆さんには、ここは本気で対抗して頂きたいと願うばかりです。
令和2年9月7日 院長 中村直也
<衝撃の学説>
今回の夏休みは故郷の墓参りができません。都民は他県移動など御法度!でしょう。近隣の飲食店をひっそり?訪れるなどして過ごそうと思います。さて自粛はいつ終わるのでしょうか。私も限界を感じる一人です。
この10日間注視してきたPCR陽性者数は2日連続で200人割れ、都内重症患者数(8/10 24人)は横ばいです。都内死亡者数をリアルタイムで知る統計は残念ながらありません。全国重症者数(8/10 162人)や全国死者数(8/10 1053人)は漸増しており不安感を残しますが、Go toキャンペーンを決行した政府は何かを承知しているようにも感じられます。噂に聞こえる「新型コロナが弱毒化した」のか、それとも「集団免疫が成立した」のか、或いはその両方なのか。答えらしきを知ったのは、つい先日でした。
「日本では新型コロナ感染症の第2波はない」と明言される学者をご存じでしょうか。京都大学大学院医学研究科の上久保靖彦特定教授です。上久保氏によれば、何と、日本人は既に新型コロナに対する集団免疫を獲得しているのだそうです。氏と吉備国際大学の高橋淳教授らの研究内容を簡潔にご紹介します。
ウイルス干渉理論(新型コロナウイルスに罹患中はインフルエンザに罹患しない)を用い、インフルエンザ感染者数の推移から新型コロナ感染状況が推定できます。そこに流行したと思われる新型コロナウイルスを「※GISAIDイニシアチブ」データベースから「S型」「K型」「G型」の3種類に分類。日本ではS型(無症候性)を魁に、新型コロナウイルス免疫を獲得する上で重要なK型(無症候~軽症)感染後にG型(重症)を向え打つ形となり「ジャパン・ミラクル」を達成。欧米ではロックダウンによりK型感染機会を失ったまま上海経由の変異G型に感染して多数の死者を出した(S型感染後にG型感染すると最重症化)と。詳しくはYou Tube「安倍総理報告済 日本では既に集団免疫が達成されている!」などをご覧ください。ただし通覧には少し根気が必要かも知れません。 ※2006年8月当時猛威をふるった鳥インフルエンザ対策に取組む世界の医療関係者が設立した「鳥インフルエンザに関する情報共有の国際推進機構」のこと。
将来を完全に見通す説はありません。が、上久保氏らの言説は、国民に安心を取り戻し経済復興の光を照らす、現時点で最も信頼すべき羅針盤のように思われます。新型コロナ感染症が指定感染症から外せれば、医療機関は通常機能を回復することでしょう。失業問題で危惧された自殺者数は6月時点で増加なし。完全失業率は6月2.8%と増加傾向ですが、まだリーマンショックに及ぶ気配はありません。幸いにも全ては挽回可能な状態に留まっています。何が真実か理解できぬまま失われた長い時間を、やっと取り戻してゆける気にさせる衝撃の学説と呼びたい私です。
ところでCOCOAは感染者登録が上手くゆかず、再び暗礁に乗り上げてしまいました。せっかくスマホ持ち歩くようにしたのに、ここは(COCOA)少し残念。。
令和2年8月11日 院長 中村直也
<自宅4連休>
皆様、この4連休はどうお過ごしでしたか?前倒しGo toキャンペーンの中、観光地では期待と不安、賑いと自粛ムードが交錯した模様です。私は基本自宅でしたが、ご無沙汰した一軒の店が気になって短時間覗いて参りました。人目を憚りながら行動せざるを得ないのは、何とも居心地の悪いものです。
第2波レベルの全国的感染者数増加の最中、「緊急事態宣言しない根拠」を国民に説明すべきとの声が野党ばかりか感染症対策分科会からも上がっています。前回コラムで「トラウマ化」と呼び捨てたのは私ですが、宣言棚上げの根拠が医療統計上あるのかどうか、念のため連休を使って再度見直してみました。見直しの視点は、東京都の新たなモニタリング項目※です。 ※新たな感染者数/東京消防庁の電話相談件数/感染経路不明者の増加比率/ PCR検査と抗原検査の陽性率/救急医療「東京ルール」適用件数/入院患者数/重症患者数の7項目
その一つ「PCR検査と抗原検査の陽性率(P)」の上昇傾向については既に言及済みです。「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト・モニタリング項目(4)検査の陽性率」では6/23P2.6%6/30P3.5%7/7P5.4%7/14P5.7%7/21P6.5%となっています。7/26はP6.5%で横ばいですが、新型コロナ感染症が都民に蔓延しているのは確実です。入院患者数はどうでしょう。7/27現在1260人で、これは緊急事態宣言下の最大数1413人に迫る勢いです。7月22日東京都「総括コメント」は、感染状況について「感染が拡大していると思われる(4段階の4)」、医療提供体制について「体制強化が必要であると思われる(4段階の3)」と正確に評価しています。最も注目すべき重症患者数の動向はどうでしょう。7/27現在19人、緊急事態宣言下の最大値105人には及びませんが、これが急増してからでは手遅れです。最前線の医療従事者は、再び医療崩壊の危機を感じているのです。
強気な政策の根幹にあるのは根拠ではなく野望でしょう。経済は十分再生せず医療従事者は疲弊するとも、PCR検査を制御棒にしてオリンピック開催まで漕ぎ着ければ、ジャパンミラクル集大成とでも言うのでしょうか。ステロイドは特効薬ならず、ワクチン開発は国や企業の野望に留まったまま。海外観戦者の水際管理は一体どうするのでしょう。他にも問題は山積しています。
緊急事態宣言に代わり無言で発令された「個別的緊急事態宣言」。日本人は自粛・自制可能な国民です。東京都の新たなモニタリング項目のうち、新たな感染者数、PCR検査と抗原検査の陽性率、入院患者数、重症患者数の4項目は、自らの行動範囲の根拠としたり医療供給体制を推測する上で有用です。加えてスマホにCOCOAをインストールすれば、現時点では最善の個別的新型コロナ感染症対策ではないでしょうか。私もインストールしました。が、あまり持ち歩いてなかったり。それじゃ意味ありませんよね。。
<Gotoキャンペーン>
先日わがクリニック事務長から「(診察の場で)政治の話は気を付けて」と指導がありました。政治動向は医療から切り離せない日常的関心事と考える私ですが、世間は、さにあらずとの意でした。良し悪しは別として、今回コラムは医療の視点というより全く政治的視点からの話になります。どうかご容赦ください。
明日から前倒しGo toトラベルキャンペーンが始まろうとしています。新型コロナ感染症第2波とも呼ぶべき最中、様々な批判を浴びつつ決行されるこの政策には、一体どんな狙いがあるのでしょう。短期経済効果を期する以外に、私の頭に思い浮かんだことが2つ(今回もまた!)。1つ目はオリンピック開催に向け、必要な交通インフラ、宿泊施設を維持しておきたいとの思惑です。2つ目は緊急事態宣言に代わる警告手段とするが如くの思惑です。以下に2つ目を詳説します。
特措法に基づく第一次緊急事態宣言を境に(ここでは他の事情には触れません)内閣支持率は逆転、あれだけの補正予算も特に評価されぬまま、ジャパンミラクルに支えられ宣言解除にこぎつけました。彼らの中で緊急事態宣言は言わば「トラウマ化」しており、2度目の緊急事態宣言は当面あり得ない筈です。7月東京で緊急事態宣言に相当する感染状況が顕現しても「軽症者が増えただけ」との言説を通していたのが、ついこの間のこと。7/22キャンペーン開始に先立つ「東京外し」宣言が7/17、それを予告するかの如く菅官房長官の「圧倒的に東京問題」発言が7/11。振り返ると、どこかロードマップじみていませんか。マスコミは都知事と内閣の不和を取り沙汰しますが、東京都キャンペーン外しは計画的でむしろ両者の合意があるように私には見えるのです。
7/17を境に急増した旅行キャンセルに対し、業者は「地の底に落とされたようなショック」を味わっていると聞きます。全く気の毒な話ですが、旅行キャンセルは金銭補助消滅の結果というより、自粛意識を煽られたせいではないでしょうか。それは姿形を変えた緊急事態宣言であり、はたまた赤く輝く庁舎とレインボーブリッジの幻影です。次のターゲットはどの自治体になるのか、注視してゆきたいと思っています。
かく言う私も、どこか旅行したくてたまらない一人。が、キャンペーン外しを度外視して出かける勇気(いや無謀!?)は勿論なし。「連休は再び自粛となりにけり」。政治家諸氏とは、いやはや文字通り老練な方々なのですね。。
令和2年7月21日 院長 中村直也
<官房長官のご発言>
菅官房長官の「圧倒的に東京問題」との発言が物議をかもしています。コロナ感染症対策の魁である北海道への社交辞令だったとしても、その思慮の無さを否定することは困難です。皆様お気づきの通り、第二波リスクは東京だけに留まらないのです。前回コラムで私が指摘させて頂いた視点からの問題は、既に隣接県にも存在します。以下それを明らかにしておきたいと思います。都道府県別感染者数の推移はNHK特設サイト「新型コロナウイルス」を閲覧して下さい。一番わかりやすく纏まっています。PCR陽性率などは各自治体HPや新型コロナ感染症対策サイトを参照し確認してください。
(一つ目の視点)東京都程の感染者数インパクトはありませんが、千葉・埼玉・神奈川各県でのPCR陽性者数は6月中下旬から増加傾向です。新規感染者数の増加は、その重症度に関わらない第二波リスクと考えなければいけません。
(二つ目の視点)新型コロナ感染症検査陽性率Pの推移は各自治体サイトで確かめることが出来ます。「彩の国・埼玉県;3/1以降のPCR検査陽性率(移動平均)」によれば6/19P0.3%・6/26P2.0%・7/3P2.8%・7/10P3.9%です。千葉は6/17P0.8%・6/24P2.4%・7/1P5.4%・7/8P6.1%(新型コロナウイルス感染症対策サイト・検査実施数から計算)。神奈川は6/18P1.0%・6/25P2.9%・7/2P4.7%・7/9P9.4%(新型コロナウイルス感染症対策サイト・検査実施人数、医療機関保険適応と集合検査場などは除く)。神奈川の結果は実施機関に偏りがあるため、横浜市を参照すると6/8-14P0.7%・6/15-21P1.4%・6/22-28P3.4%・6/29-7/5P6.7%(市内における新型コロナウイルス検査実施状況:2020/7/5現在)です。
これらの結果をどう見るかは前回コラムの論旨通りです。即ち、隣接県でもコロナ感染症が蔓延していると考えられます。大阪・京都・奈良そして福岡の感染者動向も注視して下さい。東京都はもとより今だ全国的に予断を許さぬ状況というべきでしょう。それにしても従来から為政者に軽率な発言が目立つのは何故でしょうか。数々の発言が衆目に晒され認知度が高くなるので仕方ない、なんて思う方はいませんよね。コロナ陽性者数も然り。さらに「失言陽性率」を算出すれば、政治家諸氏の格好の評価材料になるでしょう。前回・今回の応用問題でした。いったん筆を置きます。
令和2年7月12日 院長 中村直也
<都知事選が終わって>
7/5は都知事選投票日、予想に違わず現知事続投となりました。コロナ禍渦中で都民が望むのは安定都政であることが確認された訳です。さらに投票率が低く3密が避けられ何よりだった、と言うと皮肉が過ぎるでしょうか。東京都の一日あたり新型コロナ感染者数100人越えが6日間続き、昨日75人に減じ安堵するも束の間、本日224人と過去最高記録を更新しました。第二次緊急事態宣言レベルとも思える中、この感染者数増加をPCR検査数の増加の結果(に過ぎない)とする世論操作があるように私は感じています。確かに経済、教育、文化をこれ以上衰退させてはいけません。しかし、検査数が多くなって見落としが減り軽症者が多く見つかっているだけ、という言説は大事な視点をごまかすものです。大事な視点を二つ挙げてみましょう。
一つ目の視点です。元気な若い感染者が活発に3密を行き来し新型コロナ感染症は顕在化し、そして拡大しました。犠牲になったのは主として軽症感染者に端を発したと思われる高齢虚弱者や持病のある方です。軽症者が今だ多いのなら、スタート地点の状況は何も変わっていません。いつ第二波が来ても不思議ではない必要条件があるということです。彼らの中で、いつかウイルスが変異する可能性もあります。新型コロナウイルスが成人の感染症であり続ける保証すらないのです。
二つ目の視点です。ここからは「東京都新型コロナウイルス感染症対策サイト・旧モニタリング指標(6)PCR検査の陽性率」を参照し読んで頂くと理解が深まると思います。PCR検査数を拡充させ「検査難民」の発生や感染者の見落としを予防すべく都内のPCR検査数はGWを境に倍加、今はGW前の4倍以上になりました。5/7から3者(東京都・PCRセンター・医療機関保険適応)合算となった集計上の事情も押さえておきましょう。5/7から現在までの検査数と陽性率の推移に着目すると、いずれも5月下旬を境に右肩上がりに転じています。陽性数の増加には、検査数だけでなく陽性率の上昇も関与していることが良くわかります。検査ハードルを下げて広く検査すれば、陽性率は通常下がるはず。コロナ感染症の症状が出揃う前に(例えば、まだ肺炎でないうちに。あるいは、とある店の従業員というだけで)検査するのですから。陽性率の上昇は、現在進行形でコロナ感染症が蔓延していることを強く示唆しているのです。
コロナ感染症に関するこれまでのマスコミ報道は、42万人死亡説の紹介など過激な印象さえありました。これに対し、最近のPCR検査陽性率上昇という重大な統計調査の結果は、どこか意図的に過小評価・過小報道されている気がします。私は、これまで皆様を安心に導くための「深読み」を心がけてきたつもりです。今回の論説は私自身も出来れば深読みしたくない思いで書いています。しかし現実と向き合うことなしに、求める方向に進むことはできません。失うものも大きかった第1波の経験から私たちは多くのことを学び、熟慮し行動する力を強化しました。コロナ感染症を「正しく理解した上で妥当に恐れる」ための二つの視点を、少し迷いながらも敢えて「強くなった」皆様に提示させて頂きます。
PCR検査体制の拡充は、コロナ感染症診断に留まらないリスク洗い出し手段となる可能性を持ちます。もってウイルスを限局された条件に囲い込み、経済・教育・文化的被害を最小限に留め、さらには医療崩壊予防手段とすべく活用されることを願います。囲い込まれたリスクの中で生計を立ててきた方々には手厚い救済策を、局地戦で命を張る医療従事者たちには最大級の支援を準備すべき時と強く感じています。はたして「信任投票」を終えたばかりの都知事に、私の蚊の羽音のような小さな声は届くでしょうか。(PS.私も投票場に・・・行ってきました!)
2020年7月9日 院長 中村直也
<夏マスク>
昨夜は妻と2人連れだって、焼き肉屋で夕食をしました。街を行きかう人並みや飲食店の賑わいは「夏のマスク」と「ビニールシート」を除けば、まるで平常時に復したかのようでした。東京都の感染者数は、相変わらず不気味な数字で推移しています。夏マスクやビニールシートが単なる「第2波」回避の免罪符にならないよう祈るばかりです。
緊急事態宣言下の5/15、東京都はコロナ感染症第2波に備えた医療・検査体制の整備案を提示しました。①PCRセンターを都内44区市に拡大(検査)②3300床確保された都内病床数を最大4000床まで引き上げる(医療)③接触経路不明な感染者を減らすためスマホアプリの活用を検討(患者情報)、などの具体策が織り込まれています。以下、これらの進捗状況を見てゆきたいと思います。
①新たな検査体制を担う「PCRセンター」は区市行政と医師会の協力で、ほぼ全区市に広がりました。板橋区では、既にゴールデンウイーク前に立ち上がっています。②医療供給体制に関しては、そもそも都の病床数カウントなどに誤謬があったり、医療現場と都知事の認識に「ずれ」があったり(墨東病院の例)、私たち医療側の評価は上がらぬままです。これらをどう反省し第2波到来に備えるのか、都行政の大きな課題ではないでしょうか。③既に感染情報スマホアプリの「新型コロナ対策パーソナルサポート@東京」がありますが、これは主として研究目的アプリで個人の利害には直結しない印象があります。一方、先日厚労省が発表した「COCOA」はコロナ感染者との接触アプリとして開発され、感染者との1m以内15分以上の接触歴を通知してくれるものです。今後の成果に注目したいです。
日本の新型コロナ感染死亡者数の少なさは世界から「ジャパンミラクル」と称えられていますが、これを凌ぐのは台湾です。人口約2400万人に対し、新型コロナウイルス感染者数は446人、死亡者数は僅か7人です(2020年6月21日時点)。台湾のコロナ感染対策は初期対応の迅速さを皮切りに、随所にSARS(サーズ)の経験が活かされているそうです。日本もコロナ第1波の経験を今後に役立て「コロナとの共存」を果たしてゆきたいですね。
さて、夏のマスクは熱中症リスクにならないか危惧されています。蒸し暑さの中で体調不良となったらマスクを外し日陰で水分補給を行い、ためらわず帰宅ないし医療機関受診しましょう。食中毒と共に、季節の健康リスクとしてご留意ください。
2020年6月21日 院長 中村直也
<緊急事態宣言解除後の雑感>
緊急事態宣言解除後、何だか妙に落ち着いた感じになりましたね。感染爆発の危機感は薄れたものの都内感染者数は二桁続き、特効薬はまだなく、ワクチンは開発途上です。が、「新しい生活」がそれなりに定着し、不安の中にも安定感が生まれつつあるのでしょう。良くも悪くも、人間が持つ感覚には全て「馴れ」が生じるもの。そして混乱は、必ず次のステージに遷り変わってゆくのです。
さて、この頃の新聞やテレビ、ネットなど情報媒体に触れるにつけ、今までにない感覚を覚えます。海外の人々が語るコロナ感染恐怖や生活不安、コロナ感染者の体験談が、まるで隣人が語るように聞こえるのです。同一の脅威にさらされた人間は、国や人種の違いを乗り越え共感するのでしょうか。コロナ禍の洗礼を受け、世界はひとつになった気さえします。この「世界的一体感」は、私自身のポストコロナでもあります。それは「ウイルスとの共生」(5/18記載文参照)であり、「人類の願いに国境はない」と信じることに繋がってゆきます。
一方、アビガン、ヒドロキシクロロキン、レムデシビルなど世界の「特効薬」報道には冷徹な目が必要です。本来なら効果と安全性を科学的に検証し「適応」とすべき医薬品を、為政者が国民の安心や歓心を買うような政治的手段にしているからです。製薬企業の利害得失まで見え隠れするのも見過ごせません。
コロナ感染症対策の決め手となるワクチン開発の進捗状況はどうでしょうか(ワクチンとは弱毒化または無毒化されたウイルス蛋白で、これを注射し免疫獲得する)。一時、コロナ感染症に罹患しても免疫獲得できない(即ちワクチンで予防できない)との悲観論がありました。これが払拭されたかのように、今や各国で従来法による不活化ワクチン製造の研究や遺伝子工学を使った新手法によるワクチン開発が進行、ないし予定されています。最短で9月末に成果物が出る予定だそうですが、その効果と安全性には「特効薬」以上の厳格な評価が求められます。来年のオリンピック開催には、ワクチン開発が完了していることが最低条件と言われます。コロナ感染症対策のみならず、世界の経済復興の鍵を握るワクチンに、今一番熱い視線が注がれているのは間違いありません。新型コロナウイルス禍の集大成ともなるべきワクチン開発の動向を、惑わされることなく冷徹に見守ってゆきたいものです。
すでに夏かぜの季節を迎え、やがてインフルエンザが流行します。この中にはコロナ感染症を疑う方も混在するでしょう。当院に限らず非専門医療機関では、飛沫を生じる可能性があるコロナPCR検査が困難なのは勿論、同様のインフルエンザ迅速検査までが容易でなくなりました。かと言ってインフルエンザ診断まで全て専門医療機関に委ねるのは非現実的です。今シーズンこれらにどう対応してゆくかが、当院の課題です。これからも皆様に尽力できるよう、さらに勉強を重ねてまいります。皆様からも是非、率直なご意見を頂きたく存じます。どうか宜しくお願いします。
2020年6月8日 院長 中村直也
<緊急事態宣言が解除>
本日、緊急事態宣言が1.5か月を経て解除されました。今朝、わがクリニックのポスト内に、あの「アベノマスク」が届いていました。後手に終始しながら何とか帳尻を合わせたかの第一次緊急事態宣言でした。自粛一辺倒から少し解放されて、トンネルの先の光が見えたのは喜ばしいことです。しかし闘病中の方々の健康回復、そして痛手を負った社会の機能回復には、まだ予断を許しません。第2波到来にも警戒が必要です。
さて、昨日のNHKで初めて耳にしたのが「コロナ離婚」なる新語です。家にいても子育てや家事を手伝わない夫に嫌気がさしたとか、コロナ禍により経済破綻したとかで離婚争議が多発しているのだそうです。どこか熟年離婚に似た響きですよね。まだ離婚件数には反映されていない様ですが、これから顕在化してゆくのでしょうか。
「自粛生活で家族全員が終日一緒に暮らす」ことの弊害は、ドメスティックバイオレンスや児童虐待件数の増加でも指摘されています。皮肉なことに、家族間では相手を気遣う習慣が芽生えにくいものです。だからこそ、お互い気楽に過ごしているのですが。良くも悪くも「甘えの構造」を内包しているのが家族というものです。
コロナ禍が生んだ家庭内不和には、どう対応してゆけばよいのでしょうか。私はこう考えています。家族間の「甘えの構造」を再認識し、相手を受容すること。相手に受容されない自分にも気付く必要があるでしょう。そのために、まずは互いに話し合うこと。対話なしに「家族機能」を回復させることは困難です。
精神科医の斎藤環氏は(NHK NEWS おはよう日本 心の平穏を保つには)で、こう論じています。『自粛生活から生じたストレスで人は「退行」(幼稚化)し、判断力が鈍って「敵」か「味方」に分ける「白黒思考」になり、「敵」に対する攻撃性が高まって行く』と。これを読んだ私は思いました。攻撃は自己防衛本能の現れであり、攻撃的な人間は実は窮地に立たされていると気付いてあげる必要があるな、と。キリストの教えを思い出します。
斎藤氏はさらに、心の平穏を保つため「内向きの不要不急」を充実させることを提案します。「家族とのくだらないおしゃべり」はその一つ。「私たちの時間意識はプライベートな不要不急の出来事で出来上がって」いるそうです。コロナ禍で失われた不要不急の時間を復活させてゆくことこそ、緊急事態宣言解除後の最も重要な作業ではないでしょうか。 知らず他者の攻撃に費やしていた時間を改め、自分自身の時間の流れを取り戻して行くべき時は・・・今。
2020年5月26日 院長 中村直也
<緊急事態宣言が39県で解除>
全国緊急事態宣言が39県で解除されました。この1週間、都内の新規コロナ感染症患者数は明らかに減少し、東京都の解除も時間の問題かと思われます。同時に第2波到来が確実視されていますが、各地でその規模や時期は明確に予想できません。「新しい生活」は極めて具体的で評価すべき内容ですが、早くも数々の疑問が呈されています。
一方、いつ終わるとも知れぬコロナ禍の渦中で「ポストコロナ」議論が繰り広げられています。働き方改革、教育システムの見直し、コミュニティや文化的営みをどう維持するか、など多くの視点で語られていますが、いずれもまだ手探り状態と言えるでしょう。それら「ポストコロナ」議論の片隅に、注目しておきたいキーワードがあります。それは「ウイルスとの共生」です。何だかおぞましい言葉ですね。けれど、ご存じですか?生来、私たちの体内にはウイルス遺伝子が宿っている、という驚くべき事実を。
ウイルスは自ら増殖する能力がなく、他生物の細胞に自己遺伝子を寄生させ(これが「感染」です)増殖するという特徴があります。「感染」によって他生物の遺伝子内にウイルス遺伝子の断片を残したのが「内在性ウイルス」。私たちの遺伝子の所々にウイルス遺伝子の断片が挿入されていることが明らかにされていて、その割合はヒト遺伝子中の10%にも及ぶそうです。この領域で革新的成果を挙げたのが京都大学ウイルス研究所。ボルナウイルスという「ウマ脳熱症」の原因ウイルスの医学研究論文(2010年発表)の要旨をご紹介します。
「ヒトをはじめとする多くの哺乳動物の遺伝子中に、ボルナウイルスの遺伝子断片が内在化していることを発見した。」「ボルナウイルスの遺伝子断片を認める哺乳類はボルナウイルス感染症を発症しないが、そうでない哺乳類はボルナウイルス感染症を発症する、という相関性を持つ。」これらの事実から、こう推論しています。「内在化ウイルスの配列を持つ動物では、進化過程で繰り返された感染の経験から、そのウイルスの病原性に対する抵抗性を身に付け、共存を成し遂げた」。さらに「内在性ウイルス」は生物進化に大きな役割を果たしてきたことは間違いない、と結んでいます。
コロナ禍の渦中の私たちに、明けない夜はない、と遺伝子は囁いているのかも知れません。「1人1人が希望を持っていることが次の社会に繋がる」。長崎大学大学院国際健康開発研究科・山本太郎先生の言葉が頭をよぎります。何事も問題の最終解決は「戦いや排除」ではなく「共生」だと私は密かに信じているのです。
2020年5月18日 院長 中村直也
<緊急事態宣言の延長>
昨日、全国への緊急事態宣言が5月31日まで延長されました。「特定警戒都道府県(13都道府県)」では「従来の」行動制限を、「その他の地域」では「新しい生活様式」を元に行動制限を一部緩和するというものです。 「新しい生活様式」には、行動変容※のためのシンプルな具体例が提示されました。専門家集団が議論を重ねただけある内容と思います。※4/19記載<緊急事態宣言が全自治体に拡大>参照
さて、私が重要と考えるコロナ禍対策をまとめてみました。専門家会議には遠く及びませんが、どれも診察室で皆様と「目を合わせ」実感したことばかりです。まずは「3密回避」で従来からの厚労省提言通り。診察行為との整合性は常に考えています。次に手洗い、日常生活リズム保持、閉じこもり回避、最後に慢性疾患診療の従来通りの継続です。
マスクは感染者および医療従事者が着用してこそ最大効力を発揮します。「国民皆マスク」となった今、医療従事者へのマスク供給が滞っては本末転倒です。これはアルコール消毒にも当てはまります。体温測定は度を過ぎると、体温ノイローゼになることがあります。心配で幾度も体温を測らずにいられなくなったら、かかりつけ医に相談しましょう。
生活リズムは朝日と共に目覚め、日没と共に生活活動を終了させゆく生物学的再生産過程です(これに該当しない職種もあります)。昼夜逆転は、死亡リスクまで上昇させます(動物実験)。閉じこもりは生活リズムを狂わせ、とりわけ高齢者の認知症および死亡リスクを上昇させます。毎日外気を吸い日照を浴び、通院・介護通所は従来通り続けるようお勧めします。手洗いの重要性をわかりやすく解説しているのが、岩田医師です(東洋経済オンライン:手指消毒がコロナに1番効く理由、引き算の発想欠如が日本人の疲弊を招く)。洗い過ぎは手荒れを惹起し、むしろ感染リスク上昇となる可能性あり。これも適度にしましょう。
糖尿病・高血圧・呼吸器疾患・循環器疾患など慢性疾患治療中の皆様、コロナ感染症で重症化するとの警告に怯えず、かかりつけ医に逐一体調を相談し今までの治療をしっかり継続してください。持病をコントロールすることが感染リスクや死亡リスクを最小限にするのを忘れないで下さい。オンライン診療が勧められていますが、可能な限り対面診療を基本にして欲しいと私は考えます。直接診察しないと発見できないことが多いからです。
厚労省HPで公表された「人との接触を8割減らす、10のポイント」に、オンライン飲み会が挙げられています。皆様に福音?のこの飲み会、店で飲むより飲酒節度を失う傾向があります。せめて「閉店時間」を決めて楽しんでください。
2020年5月5日 院長 中村直也
<緊急事態宣言下で迎えるGW>
都内ではコロナ感染症者の急増はないもの、まだ1日当たり100人以上の新規感染者が発生し続けています。この間、感染の場はクラスター感染から院内感染および経路不明の市中感染に移行しました。医療崩壊を阻止するためには、待ったなしの状況です。
コロナ感染症診断の決め手はPCR検査です。日本ではPCR検査が絞り込まれ実施されるため、人口当たり検査数が少ない傾向にあります。これには理由があるのですが、見過ごせない問題点もあります。PCR検査が可能な施設はすでに手一杯。発熱者が保健所や複数医療機関を彷徨し、最終的にコロナ感染者と判明する例が報告されています。これは是非とも抑え込みたい感染拡大リスクです。そのためにはPCR検査の数を現行以上に増やさないといけません。
4月17日東京都医師会は都内に最大47の「地域PCRセンター」を設置すると発表しました。この板橋区にもPCRセンターが開設される予定です。これらがコロナ感染症診療の一助になることを祈るばかりですが、検査数が拡充されるとPCR検査陽性者が増えるのは勿論、検査陰性の感染者(偽陰性)も増加します。これらに対するきめ細かな対応が必要です。
さて、コロナ感染者が増加するにつれ、不安や恐怖に苛まれる人が増えています。不安や恐怖は、個人の持病の悪化や新たな疾患リスクとなるばかりか、社会を分断する問題に繋がる可能性があります。「赤十字NEWS」は、それに警鐘を鳴らしています。YouTube【日本赤十字社】「ウイルスの次にやってくるもの」は、とても印象的な動画です。
宇宙飛行士の野口聡一氏は、非常事態宣言下での健康的生活のコツを自身の体験から語っています。「宇宙飛行士も行動制限があり、思うように人に会えないなど、似たような精神状況になります。そうした中、朝起きたあと水を飲んで運動するという自分なりのルーティンを作ることが、生活ペースをつかむため非常に大事でした。」
今なすべきこと、いつでもそれを見失わないことが健康で安定した生活を送るコツではないでしょうか。まもなくゴールデン・ウィーク、日常生活リズムを崩さず「スティ・ホーム」して下さい。今しかできないことを試みるのも、一考ではないでしょうか。TVやネットの見過ぎは「心のウイルス感染リスク」になります。くれぐれもご注意下さい。
2020年4月26日 院長 中村直也
今朝の空は晴れ渡り富士山の裾野が白く聳えますが、山頂は雲に隠れて見えません。風は強めに吹き、天に伸びた新緑の枝々が仲睦まじげに語り合うように揺れています。自宅マンション6階ベランダから眺める人や車通りは少なめですが、先週日曜日より増えた気がします。
4月16日、コロナ感染症に対する緊急事態宣言の対象が全自治体に広がりました。当初はクルーズ船、屋形船、ライブハウスなどと特定できた感染の場が次第に特定不能となり、日本独自のクラスター対策でカバーしきれなくなったためです。都内では院内感染が各所に発生、医療崩壊が現実のものとなりつつあります。東京では、オーバーシュートは免れているものの感染者数減少には至らず、死者数も少しずつ増加し先が見えません。
それにしても少し唐突な印象だった「対策なし42万人死亡」説でした。これは換言すれば「全国余す所なくコロナ感染が波及した時の死亡予測数」に他なりません。短期間に全国が感染者で溢れれば社会機能は停止し、至る所でパニック状態が起こり、さらに膨大な死者が発生することでしょう。ただし、これは考えうる「最悪の」シナリオです。
ところで恐怖を煽れば、危機に面した社会は正しい方向に向かうのでしょうか。コロナ感染症禍の日本を血糖コントロール不良の糖尿病患者さんに例えてみます。「こんな血糖値じゃ、いずれ透析になるよ」と脅すと血糖値は期待通り改善するでしょうか。私の経験では、短期効果はあっても長期的効果は望めません。自分は透析になる筈がないと高を括る(合理化)か、恐怖におびえ医者を変える(逃避)か、治療中断(意欲喪失)さえあるのです。血糖値の改善のためには、各自の生活習慣や価値観などを視野に入れる必要があります。朝食は必ず取る、よく噛んで食べる、睡眠を十分にとる、薬を忘れず飲むなど、できる限りシンプルで継続可能な要点に的を絞らないと、人の行動変容の契機にはなりません。社会もこれと同じように思うのです。
行動制限の要点は、社会的立場や老若男女で異なります。1人1人が自分の社会的役割を再認識し、コロナ関連情報が氾濫する中、自分は今何をなすべきか、なさざるべきか改めて整理する作業が必要です。緊急事態宣言の実施期間には自ずと制限があるでしょう。飲食店、旅行・宿泊業者はもとより、宅配ドライバーや医療介護従事者からも「このままでは身体も心も持たない」との声が上がっています。「3密」は皆の知るところとなりましたが、さらなる感染リスクの洗い出しが急務です。来るべき「緊急事態宣言解除後」に求められているのが、より限定的で有効な行動(制限)指針です。SNS「Line(ライン)」の試みは、その一つになる可能性を秘めています。
国家は国民の暮らしと命を守り、自治体首長は地域リスクを明示すると同時に、住民がより安心して生活できる環境づくりに全力を注いで欲しいものです。基幹病院だけでなく、我々開業医も一枚岩となってコロナ感染症に対峙してゆく必要があります。「1人1人が希望を持っていることが次の社会に繋がる。」長崎大学大学院国際健康開発研究科・山本太郎教授のお言葉です。雲に隠れた富士山頂が現れ、風に揺れる新緑の枝のように再び人々が笑顔で語り合える日を信じて、力を合わせ進んで行きましょう。
2020年4月19日 院長 中村直也
<緊急事態宣言後の雑感>
4/7の緊急事態宣言から5日が過ぎました。今日は日曜日、私の自宅(板橋区志村)周辺は人も車も少しまばらですが、「緊急事態」と呼ぶにはどこか迫力不足です。欧米からは日本はコロナを侮っていると指摘されています。欧米は戦争感覚、それに比較すると日本の緊急事態宣言は「やっと出たか」の印象さえあります。この温度差はどういうことなのでしょう。
「人口あたりの新型コロナウイルス死者数の推移【国別】(札幌医大)」を閲覧すると、欧米と日本のコロナ感染による死者数(人口百万人当たり)に桁違いの差が読み取れます。死亡率(コロナPCR陽性者数に対するコロナ感染症死者数)は世界のそれと大差ありませんが、日本は検査数不足との指摘を考慮すると、死亡率は実際より高めに出ている可能性があります(チリでの死亡率が低いのは検査数が多いためといわれています)。これは日本医療の秀逸さを示唆するのか、それとも日本人はコロナ免疫に有利な条件を持っているのか、専門家の間で色々な推測が飛び交っています。
さて「不要不急の外出」を控え「自粛」が求められる一方、閉じこもりや過度の自粛は健康被害や経済被害を増大させてゆきます。閉じこもりは高齢者の認知症リスクや死亡リスクを上昇させると言われます。この1か月間の自院での診療を振り返ると、皆さんの血圧や血糖値上昇にも関係がありそうです。中には外食が出来なくなり血糖値が下がったという方もおられましたが。また、失業率と自殺率には明白な相関があり、失業率が1%上がると日本では1000人単位で自殺者が増えるとの推計があります。このリスクは決して無視できません。
日本のコロナ死者数と失業自殺者数の推計を比較してもゴールは見えてきません。しかしコロナ感染症だけに焦点を当てた議論は、社会的損失の観点から妥当でなくなる予感がします。医療従事者の一部が頑張ってコロナ感染症を完結させることは元よりできません。発熱者が「たらい回し」にならないようPCR検査には更なる場所と人手が必要でしょう。医療崩壊のリスクを防ぐため、感染者のさらなる急増に備え病院に代わる収容の受け皿づくりは急務と思われます。加えて現状の企業・労働者支援政策は、どこまで該当者の救済になるのでしょうか。疑問が拭えません。どこか迫力に乏しい安部首相の「緊急事態宣言」と、道行く人や車通りが重なって見えるのは、きっと私一人だけではないでしょう。
「一人一人の生活を守り、一人一人の生命を守りたい。」今朝の日曜討論(NHK)での西村経済再生担当大臣のご発言です。これが本当であることを切に願いたいですね。
(2020年4月12日)院長 中村直也
<免疫とは>
免疫を獲得するには、ある感染症にかかって治る以外に、その感染症のワクチンを注射する方法があります。季節性インフルエンザワクチンや男性風疹ワクチンなどは、個人の感染予防だけでなく集団免疫で病人・老人や妊婦を守るという社会医学的な目的があります。
インフルエンザ、麻疹(はしか)、風疹、おたふく風邪など、ある感染症に一度かかって治ると、以後その感染症にかかりにくくなる現象があります。これを「免疫獲得(※)」と呼びます。即ち、感染ウイルスに対する抗体(ウイルス中和作用を持つ)を速やかに体内産生する能力を獲得した状態です。※免疫=疫病を免れる(疫病にかからなくなる)との意
コロナに限らず感染症は一般に、大多数が免疫を獲得していれば流行しません。この事実を元に感染流行を予防する考え方を「集団免疫」と呼びます。ウイルスは人から人へ伝播するため、免疫のない人が多いほど感染者は鼠算式に増えてゆきます。一方、感染者が増えるほど免疫を獲得する人も増えて、やがてウイルス増殖の場がなくなって流行は終息を迎えます。
<コロナ感染症の動向>
東京都ではすでに一日の新規コロナ感染者数が100人を超えました。新聞によると板橋区民にもコロナ感染者が発生しています(4月3日時点で計13人)。特効薬やワクチンの開発には、まだ時間がかかるでしょう。急速な感染者の増加は社会的パニックや医療崩壊を招く一方、集団免疫が進みコロナ感染症は終息方向へ動きますが終息時期がいつかは判然としません。
本日、緊急事態宣言が発令されました。爆発的コロナ感染症者の増加と医療崩壊リスクは低減すると期待されます。北海道大学・西浦教授の試算によれば、80%の外出制限を行うと50日ほどで感染拡大がおさまるそうです。しかし、その間にも社会経済的損失は増大してゆきます。皆様は、どうお感じになっているでしょうか。 (2020年4月7日)院長 中村直也